「ワーク・ライフ・バランスの一層の推進で新しい成長を促そう」
1年前、私たちワーク・ライフ・バランス推進会議は、不況下においてもワーク・ライフ・バランスの取り組みが滞ることのないよう緊急アピールを行った。その後、景気は着実に持ち直し、各企業においても働き方改革の気運が少しずつ盛り上がり、労働時間面の改善も進みつつあった。しかし、生産の回復に伴い、再び残業時間が急増するなどの現象もみられることから、ワーク・ライフ・バランス推進の流れを逆行させてはならないことを、改めて訴えたい。
1.ワーク・ライフ・バランス推進によって、持続的な成長に向けた活力を生み出せ
現在、政府において、本年6月までに「新成長戦略」の取りまとめが進められているが、もとより、経済の成長は、人材の育成とその能力の発揮なくしては成り立ち得ない。このため、国をあげて教育訓練や能力開発を推進することはもちろんだが、同時にワーク・ライフ・バランスを基盤にした働く環境づくりにも力を注ぐべきである。それこそが、生産性を高め、持続力ある成長への活力を生み出す原動力である。
2.人口減少対応のためにも、ワーク・ライフ・バランス施策の充実を
人口減少下における労働力確保は緊急課題として取り組まなければならない。政府も、若者・女性・高齢者・障がい者に重点をおいて、就業率の向上を目指す種々の雇用戦略を取ろうとしているが、保育サービスの一層の充実が必要である。また、企業においても、ワーク・ライフ・バランス施策の環境整備など一段と進める必要がある。
3.我が国の人材力向上に向けて、一段の働き方改革を
「人材立国」の観点に立てば、わが国の教育に関する施策や社会環境整備の遅れも大きな問題である。次世代を担う子ども達の教育に結びつくよう、ワーク・ライフ・バランスの推進により働き方を改革し、働く人も地域や家庭との繋がりを強めることが重要である。このことは国民のボランティア活動などの社会参加を活発にし、「新しい公共」の創出にもつながる。さらには、働く人自身の自己啓発を行うための時間的ゆとり創造や社会環境の改善を一層進めるべきである。
以上のように、ワーク・ライフ・バランスの重要性はますます高まってきているが、政府の施策が財政的な制約を受けてしまうのは甚だ残念である。この運動を単なる精神運動にとどめるのではなく、経済成長への重要な戦略目標の一つとして掲げ、具体性を持った展開を急ぐべきである。「新成長戦略」の一環として、ワーク・ライフ・バランスを推進すべく、政府の一段の努力を促すとともに、労使自らの取り組みの一層の強化を求めたい。
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(発表日:2010年3月29日)