生産性新聞 (2008年3月5日号1面)
ワーク・ライフ・バランスを考える実践セミナーを開催
〜地域レベルでの連携を目指す〜
社会経済生産性本部と「次世代のための民間運動〜ワーク・ライフ・バランス推進会議」は2月26日、東京・千代田区の都道府県会館で、「ワーク・ライフ・バランス実践セミナー」を開催(共催=内閣府男女共同参画局)し、自治体の推進担当者ら約100人が集まった。当日は、「地域レベルでの連携と推進を目指して」をテーマに、地域におけるワーク・ライフ・バランスの実践のあり方や、地元の企業・団体・NPOなどと行政との協働・連携のあり方などが議論された。
同セミナーでは、松川昌義・同本部理事の開会あいさつに続き、石川県と埼玉県におけるワーク・ライフ・バランスの推進・普及に向けた取り組み事例が報告された。
重永将志・石川県少子化対策監室子ども政策課長は、「子育て支援は、これまでの行政や保育所中心から、これからは社会全体とりわけ企業が大きな役割を果たすことが不可欠だ。企業による子育て支援は『従業員に対する仕事と家庭の両立の支援』と『地域の子育て家庭に対する支援』の二つが車の両輪と考えている」と述べ、石川県が実施している「いしかわ子ども総合条例」で従業員100人以上300人以下の中小企業に対しても次世代育成支援対策推進法の行動計画策定を義務づけていることなどを紹介した。
谷内迪子・いしかわ子育て支援財団専務理事は、「子育てにやさしい企業推進協議会」が実施している「プレミアム・パスポート事業」(3人以上の子どもを持つ家族に対して、県内の協賛企業が様々な割引や特典を設定する事業)の取り組みを紹介し、協賛店舗が約1800店舗、パスポート申請世帯が昨年度で1万5000世帯に達していることなどを明らかにした。石川県と子育てにやさしい企業推進協議会はこれらの取り組みによって、「ワーク・ライフ・バランス大賞」(ワーク・ライフ・バランス推進会議制定)の優秀賞を昨年受賞している。
林俊宏・埼玉県福祉部少子政策課長は、「埼玉県の人口はすでに減少に転じており、このままでは15年間で県内就業人口は1割減少する。今後は女性と高齢者、特に女性の活用がカギとなる」と指摘した上で、埼玉県が独自に取り組んでいる「子育て応援宣言企業の登録」や、ワーク・ライフ・バランスの専門家を企業等に派遣する「ワークライフバランス水先案内人」事業などを説明した。
「地域レベルでの連携強化でワーク・ライフ・バランスの実現を」をテーマとするパネル討議では、坂田道夫・足立区区民部長、藤倉潤一郎・鶴ヶ島市協働政策幹 、杉山千佳・セレーノ代表取締役、村上文・21世紀職業財団専務理事、定塚由美子・厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課長、北浦正行・社会経済生産性本部事務局次長(兼コーディネーター)の6人が登壇した。
地域との連携強化では、「中小企業が新しいビジネスモデルを作っていくには優秀な人材が必要だ。ワーク・ライフ・バランスは中小企業の生き残りの大きな武器になる」(坂田氏)、「官民が協働による地域経営を推進し、地域の魅力や生産性を向上していく必要がある」(藤倉氏)、「行政が企業とNPOのコーディネートができれば地域連携に広がりができる。行政におけるワーク・ライフ・バランスが進まなければ、企業を説得できない」(杉山氏)、「ワーク・ライフ・バランスは地域や行政、住民をつなげる言葉だ。縦割り行政によって分かれていた住民の層をつなげていくことが可能になる」(定塚氏)など、活発な議論が展開された。
また、村上氏からは21世紀職業財団が実施している「ワーク・ライフ・バランス企業診断・認証事業」などの紹介が、定塚氏からは次世代育成支援対策推進法の改正内容案の紹介などがそれぞれ行われた。北浦氏は「子育て支援のメニューは豊富になっており、それをどう活用するかが自治体の役割だ。自治体にはワーク・ライフ・バランスのコーディネート役が期待されている」と議論をまとめた。
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